28歳女性。10代の頃からひどい生理痛で、まず激痛がくるところから開始する。鎮痛剤が間に合えば寝込むくらいですむが、間に合わないと七転八倒の苦しみである。腹痛以外に、頭痛・吐き気・内股からくるぶしにかけての痛みもある。月経周期35日、出血は2日間。
わたしがこの方に初めてお会いしたときは、かなりお辛い状態でした。痛み止めのおくすりを使って運良く効いても、寝込むほどの痛みがあり、日常生活に著しく支障がおありでした。
くわしくお話をうかがうと、月経量はかなり少なく、カサカサと乾燥したようなものが少量下りて終わってしまうとのこと。この方にとって月経とは、出血よりも痛みが主だったのです。
胃腸もあまりお丈夫でなく、気持ちも滅入りがちでした。漢方で調節するとよい部分は複数おありのお身体でしたが、まずご本人にとってもっとも辛い、月経に伴う「頭痛」「吐き気」「内股からくるぶしにかけての痛み」の改善を狙いました。
実はこれらの痛みは、「経絡」に入り込んだ「冷え」によって引き起こされる症状です。そこで、その入り込んだ「冷え」を追い出す処方を使用したところ、次回の月経時、「頭痛」「腹痛」は程度が軽くなり、「吐き気」はほとんどなく、「内股からくるぶしの痛み」は消失しました。
依然として「月経量が極端に少なく乾燥して」いるため、本来の「血液量が不足して流れも悪くなり、そのために痛む」ことの改善へ進みました。
中医学の言葉に「不通即痛」というのがあります。「流れなければ痛む」ということです。この「流れない」原因にはいろいろありますが、この方の場合、明らかに「流れようにも流れるべきもの(この場合は「血」)がない」という状態です。こうしたことは、胃腸の消化吸収力が弱く、「食べられない」「食べているのに体内で利用されていない」方に、よく見られます。この方の場合もまさにそうでした。
胃腸を温め、内臓を流れる血液を増やすお手当に切り替えて半年間続けられ、この方の月経痛は、ゼロにはなりませんでしたが、寝込むほどのことはなくなりました。経血量も「ナプキンを換えたいと感じるようになりました」とのことでした。それまではナプキンが汚れるほどの量もなかったのです。
その後ご家庭のご事情で漢方療法を中断されましたが、ある程度不足分が補われたあと、これまでに溜まっていた老廃物(この場合は「乾血」)のお掃除まで手が回ると、月経に伴う不快な症状はもっと少なく出来たろうな、その後お加減いかがかな、と、今でも時折その方のことを思い出します。